2010年代のアイドル名盤と、楽曲派のススメ
2年ぶりぐらいのブログ更新です。ご無沙汰しております。
さて 2017 年はアイドルソングを中心に聴いていました。自分でも予想だにしなかったジャンルを聴いてるなぁという感じではありますが、良いものは良い。
ヒップホップの四大要素のようにアイドルの要素を分けたとき「楽曲」へフォーカスしているであろうアイドルのことを「楽曲派」と呼称するようなのですが、確かに楽曲派のくくりには「これってアイドル・ソングという枠に留まらず良くね?」という曲のが多い気がします。
まあ、例えば AKB48 を筆頭に、ほぼ全てのアイドルの曲というのは、商業的にバッチリ良い曲であることは間違いないかと思うんですが、その中にあって「これはちょっと・・・いいぞ!」みたいなものがある、ということです(自分の好みだろう、と言われればそれまでではありますが)。
「アイドル 楽曲派」などで検索すれば出てくるものが大半ですが、一応レビューを掲載してみようと思います。
3776 / 3776を聴かない理由があるとすれば

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一番最初に「楽曲派」のことを知ったきっかけがこれでした。一度見たら忘れられないジャケとタイトル。
3776 は静岡県富士宮市を中心に活動する「富士山ご当地アイドルグループ」。もともと7人居たメンバーは最終的に1人になり(ジャケの子)、その1人とプロデューサーによってリリースされたアルバムがまぁこれまた、という感じ。
Amazon のレビューにある「正統派アイドルポップスにピチカートファイヴとThe Orbを混ぜたらフランク・ザッパみたいになった」という、膝をピシャリと打ちたくなるナイスな表現をつい引用してしまいますが、なんだろう、アイドル・ソングであることは間違いないんだけど、それだけじゃない「何か」を内包した1枚、と言えます。
後述する 2 枚なんかもそうですが、基本的には「単曲をまとめるためのフォーマット」という構成が多いであろうアイドルのアルバムにあって、トータル再生秒数を 3776 秒にしているとか、その 3776 秒を 3776m の富士登山とシンクロさせているところとか、 3・7・7・6拍子の曲が入っているとか、コンセプトが非常に固く、強いです。
「このアイドルはこういう曲を歌うんだな」というレベルのコンセプトの発露は、恐らくアイドル、特にご当地アイドルにとっては基本と言えるのかもしれませんが、このアルバムはそこから 2・3 頭身抜きん出ており、3776 秒の構成を余すこと無く利用し、富士山ご当地アイドルグループであることを表現しています。
音楽的に近い部分はあまりありませんが、個人的な印象としては Maxwell / MAXWELL'S URBAN HANG SUITE や The Artist Formerly Known As Prince / The Gold Experience などに肉薄するコンセプト・アルバムではないかと思っています。

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曲としては 7.避難計画と防災グッズ から 8.日本全国どこでも富士山 の繋ぎが好みです。3776 秒 = 62 分 55 秒なので、あんまりダレずに聴き通せるのも好印象。
Tomato n'Pine / PS4U

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もともとアイドル自体全くと言っていいほど知らないため、そのほとんどが「誰?」という感じにはなってしまうのですが、そんな中にあって、珠玉の名曲揃いだったアイドルが居たりもして、なんだよ、どこかで自分のアンテナに引っかかっていればリアルタイムだったのに!と悔しがったりしている有様です。
トマトゥンパインの詳細は Wikipedia に譲るとして、楽曲がとにかく良い。アイドル本人たちの脱力加減とも相まって、耳触りの良いトラックに仕上がっており、曲だけ聴くと「これいいね、有名なグループなの?」と思わず確認してしまいそうな魅力にあふれています。
カバー曲はさておき、アルバム全体をして名曲しか無いという感じではありますが、個人的に白眉なのは 5. 10月のインディアン と 13. 大事なラブレター の 2 曲。特に後者は渋谷系をフィーチャーした構成・歌詞になっていて、往年のファンなら思わずハマってしまうことうけあい。
既に解散( Wikipedia になぞらえると "散開" ですが)してしまっているのがなんとも残念極まりますが、アイドルというもともと短スパンな活動の中においてこれだけの名盤が出ているということを捕捉できたこと自体が幸運だったというか、なんというか。ヘタすりゃ知らないままだったわけですからね。
Negicco / Rice & Snow

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「米と雪」というタイトルそのまんまに新潟県発、10 代前半から初めて 2018 年で活動歴 15 年、ネギをフィーチャーしていることでおなじみの「名前は聞いたことがある」レベルでは知っていた Negicco でしたが、楽曲を聴いてそのバラエティの豊かさにびっくりしました。
もちろん単純な楽曲の良さがまずあるのですが、彼女らのバックグラウンド(古参ファンの方が楽曲を提供、などなど)を知るにつれて、その良さがますます増していきます。ウワー!!と叫ぶような衝動ではなく、なんとなく暖かな目で見守りたい、そんな雰囲気にさせてくれるのが Negicco なんだろうか、と。
ピチカート・ファイヴの小西康陽や、ORIGINAL LOVE の田島貴男など、ガッチリとアイドル・ソングにリンクしているイメージがあんまりない大御所が曲を提供しているというのも、この雰囲気であれば非常にうなずけるものだと思います。そしてそれら豪華ゲストの仕事もまた良い。
2018 年 2 月の段階で 26〜29 歳と、数字だけで見ればそろそろ「次のステージ」へ差し掛かっているであろう年齢のメンバーにありながら(コアなファンの皆さんすみません)、これだけの長い期間、アイドルとして活動しているという実績に、アイドルという存在の本質を見る思いがします。こういうアイドルの楽曲が良くて、なおかつご当地アイドルであるというのは、他のご当地アイドルのみに留まらず、ご当地の音楽プロデューサーにとっても良い影響を残しているに違いない。
曲は 2. ときめきのヘッドライナー と 7. 二人の遊戯 がツボです。7. 二人の遊戯 は ラ・ムーを彷彿とさせるシンセのサウンドがクセになる佳曲。アルバムのトータルバランスが高く、楽しめます。
全体として
耳触りがよいのは、恐らくですがギター・サウンドや歌謡曲、ソウルなど、EDM 全盛の昨今にあって忘れ去られがちになっているジャンルを彷彿とさせるからではないだろうか、というのが個人的な見解です。
電子楽器は当たり前のように利用されていますが、たぶんそれだけでは耳触りの良い音にはならなくて、そこにやっぱり「アイドル」の存在があるからこそ、これらの楽曲はアイドル・ソングであるとともに、耳触りの良さとなって伝わるのではないかなと。

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3 枚以外にも、例えば sora tob sakana や Maison book girl、・・・・・・・・・ (これが名前)など、ポストロック〜ニューエイジ、エレクトロニカ〜ノイズなどに接近しているコンセプトのアイドルも居たりして、これはこれで良いのですが、個人的にはやっぱり普遍的なポップスが良い、そうなると前述した 3 枚のアルバムが良いかな〜、という。
聴きやすいポップスから、シリアスなエレクトロニカまで、改めて探してみると実は結構充実しているのでは?!という感じのアイドル・ソング界隈、最近いい音楽なくてね〜・・・という人は是非チェックしてみることをオススメします。あなたの地元のアイドルの曲、もしかしたらすごく良いかもしれませんよ。